BEYOND THE EMBRACE「INSECT SONG」

マサチューセッツ州出身のトリプル・ギターを擁する6人組メロディック・デス・メタルバンドの2ndアルバム。もはやメロデスとは定義できないほどノーマル声を多用して、イエテボリ系のメロデスサウンドを基調にしながら正統派ヨーロピアン・メタルの要素をより強く打ち出して来ています。一方で重厚なスクリームを聴いていると、アメリカ産ならではの、ハードコア勢からの影響も少し感じたりも。しかし音はほぼ100%伝統的な正統派メタルと言い切ってしまってよいと思います。アメリカ産ならではのメロディに関する煮え切らなさは全く感じられません。

前作はほんとうにギター3人いるの?と思ってしまったりと、若干音が薄く、トリプルギターという武器を生かしきらないややしょぼなアレンジが残念だったわけですが、今作は随所でトリプルギターでしか出来得ないギターの使い方をしているパートが増えています。(またそれが素人でもわかるくらいちゃんと音が分離しているんですね)あとは、Voの成長が著しいかと思いました。ノーマル声、デス声(北欧メロデス風だったりハードコア風だったり)を自在に大きさを変えながら器用に操ることができるこのVoのおかげで、正統派とイエテボリ系のメロデスをクロスオーバーしたところに高いレベルで音楽性を保てているのではないかと思いました。同様な変化を見せ、心境著しいDARK AGEの日本盤が出るなら、こちらもいつ日本盤が出てもおかしくない好盤です。

SKYLARK…?

ネット(クサ)メタラーの大物JIN氏の熱烈な大Pushによって、静かに、でも着実に日本でファン層を拡大してきたSKYLARKの新作6th「WINGS」が、とうとう日本盤リリースされましたね。なんていうか、どうでしょうか?音も軽いしメタルっぽくないし、#9、#10のBONUS TRACKはショボ過ぎるし、で期待はずれかも。音楽性の変化をあれこれ言う前に、全体のアレンジが今一歩な感じがしますが…?それでも#3 Another Reason to Believeに代表されるように、さわやかに哀愁を醸し出す超即効性のあるメロディに関しては文句無く気に入りました。(メロディだけね)

SHADE EMPIRE「SINTHETIC」

外国のオンラインショップでは結構見かけることの多い、フィンランド期待のキラキラKEYを大フィーチャーし(てい)たメロディック・デスの新人バンドSHADE EMPIREが2004年4月にリリースしたデビューアルバムです。期待して待っていましたが、なかなか日本に入ってこないので痺れを切らしてEND RECORDSのオンライン・ショップから取り寄せました。結果13.00 USDで買えてチョットニンマリ。

で、さっそく中身を聴いてみたのですが、聴いて予想外の変化にびっくり。ストレートで殺傷力のある悲哀メロを、キラキラで大仰なKEYに乗せてストレートに疾走する路線だったデビュー前の音源から、KEYのスタイルが大きく変化していました。メロディのフックはデビュー前の音源と変わらないレベルを維持しつつ、KEYの雰囲気が最近北欧で大流行のインダストリアルでサイバーなシンフォニック・ブラック・メタル系のスタイルに急接近しています。日本人の好きな普遍的で伝統的な大仰オーケストラヒット系のサウンドから乖離したことで若干聞き手側の敷居が上がりましたが、ピコピコしたデジタルKEY路線がどうしてもイヤという人でなければ、わかりやすいメロディラインの助けもあるのでまだまだ余裕で入っていけると思います。バックの演奏もしっかりしてますし。(ていうかこのバンドはKEY以外がメインで、Voもバックですね/笑)この作品に1点難癖をつけるとするならば、海外のどこかのWEBZINEにも書いてありましたが、KEYが前に出すぎでGとかVが少し奥に引っ込み気味なプロダクションがちょいもったいないかな…?とは思いました。しかし、今風の最先端のメロディック・デス・メタルの1つの形としてレベルの高い作品をわかりやすく提示してくれていることは確かだと思います。日本盤が出るのかどうかはわかりませんが、ピコピコ音が嫌いでなければメロデス・ファンにとっては重要な一枚かもしれませんね。

SHAMRAIN「EMPTY WORLD EXCURSION」

ちょっと前に買って1度聴いて「あ〜静か過ぎてダメかも、もっとダウンチューニングしたダウナーなギターがじゃりじゃり鳴るような展開じゃないとつまらん・・・」なんてうそぶいてさっさと封印してしまったこの作品ですが。最近、自分でも驚いているのですが急速に自分の中で好きなジャンルが暗黒系寄り、ゴシック寄りになっていく中で、今聴き返したらどう感じるのだろう、なんて思いながら再度挑戦してみたのですが、これがなかなか悪くないみたいです。

えーと、気を取り直して簡単にこのバンドのプロフィールを紹介してみますと、VoにENTWINEのフロントマン、Mika Tauriainenが参加してることで、音楽性から見るとメタル色はほぼゼロながら、各地の暗黒系輸入盤を取り扱うメタル屋に入荷された、2003年メタルメイニアにも聞き覚えが薄いイタリアの新興レーベル、WATCH ME FALL RECORDSよりリリースされたフィンランド産ゴシック・ロック・バンドです。全9曲がほぼKEY奏者のMatti Reinolaの手により書かれていることより、どうやら彼がバンドの中心人物らしいです。KEY奏者が中心なバンドの一般的な傾向(長所かも?)として、ギター以外の楽器を比較的自由な発想で使えることがありますが、このバンドも、静かに、しかし実に効果的にアコースティックギター、チェロ、ピアノ、フルート等を導入しており、悲しげでモノトーンな音色のKEYと絡んでETHEREALでMELANCHOLICな雰囲気を作り出すことに成功していると思います。

追記(2004/5/29):Mattiは同郷フィンランド出身ゴシック・メタルGRAYSCALEの中心メンバーでもあるようですね。つまりメタル人脈によって結成されたGothic Rockバンドだということで。